障害年金と障害者手帳の違い

[記事公開日]2020/05/23
[最終更新日]2020/05/25

〇身体障害者手帳とは

身体障害者手帳は、お住まいの市区町村役場に申請します。申請にあたっては、まず医師の診断書が必要ですので、医師に相談します。医師には、指定医制度があるため、どの医師でもいいわけではありません。障害年金は指定医がなく、どの医師でもOKです(精神の障害を除く)。ここが最大の違いです。

医師が指定医でなければ、指定医師を役所に尋ねると、教えてくれます。指定医師の診察で、身体障害者手帳に該当すると言われれば、役所に診断書を取りにいき、指定医師に診断書を書いてもらいます。

この診断書に、指定医師による身体障害者手帳の判定が記入されています。身体障害者手帳の判定には1~7級までありますが、手帳が発行されるのは、1~6級までです。1級が最も重い状態で、6級が最も軽い状態です。

その後、写真1枚と診断書などを役所に持っていき、申請すると、1~3か月後、身体障害者手帳がもらえます。身体障害者手帳をとりに行くと、小冊子(福岡市の場合、「福岡市の障がい福祉ガイド」)を渡され、必ず受けられる福祉サービス(補装具、日常生活用具などたくさんある)、公共サービス(高速道路料金割引、NHK利用料金減免など、こちらもたくさん)などの説明を受けます。そのサービスの中に障害年金のことも含まれます。この時点で、はじめて「障害年金」の存在を知る方もたくさんおられます。

年金事務所に相談に行ったが、内容が複雑すぎて、よくわからなかったとお話しされる方もおられます。身体障害者手帳の申請が、住所、氏名を書くだけで割と簡単なのに比べ、障害年金には、「初診日」、「納付要件」、「診断書」、「病歴・就労状況等申立書」などありとあらゆる点を理解しながら、東京の医師や、専門審査官が、どの書類を見ても、おかしくないように準備しなければならないからです。

障害年金の申請には、身体障害者手帳の有無は、直接は関係ありません。つまり、なくても申請は可能ですが、持っていればコピーを提出することになっていますので、障害年金の審査に当たっての参考にはされていることと思われます。

障害年金申請上の最大の課題は、医師が障害年金診断書の書き方を理解していないことにあります。当事務所では、当事務所で作成した診断書記載例をお渡しして、診断書作成に誤りがないように留意しております。

身体障害者手帳を申請する方の多くは、65歳以上の高齢者のため、障害年金の申請をされる方は、少ないと思われます。

 

〇療育手帳とは

療育手帳(りょういくてちょう)とは、知的障害がある人に対して、各種サービスを受けやすくするための手帳です。お住まいの市区町村役場に申請します。

福岡県(福岡市を含む。)の場合は、A1(最重度)、A2(重度)、A3(重度身体障害と中度知的障害との重複)、B1(中度)、B2(軽度)の5ランクがあります(判定基準は、都道府県ごとに異なります。)。

A1、A2の方は、ひとりで外出することは難しく、B1、B2の方は、訓練すれば、ひとりで外出可能です。B2の方で、訓練せずに、どこへでも行ける方は、障害年金は、むずかしいでしょう。

障害年金との関係で言えば、A1からB1までは、障害年金の対象となる方です。
問題は、B2の方です。B2の方は、会話も成り立ちますし、知能指数も高いので、障害年金の申請はできますが、不支給となることが多いと思います。

ただし、「知能指数に着眼するが、それだけではない。」というような障害年金認定基準と等級判定ガイドラインがありますので、それらを参考としながら(やはり知能指数が基本となるのですが。)、医師の診断書や、病歴・就労状況等申立書にどういう状態であるのかを、つまびらかに明記することで、B2で、しかも、知能指数が高い方は、「何とかもらえたらいいなぁ。」とダメモトで思っていただければ、いいと思っております。知能指数が高くて、障害年金が難しい場合は、発達障害がないか、当事務所で検討します。

療育手帳をお持ちの方は、病院に通院されていないことが多いと思われます。知的障害を診てくれる医師が、かなり少ないので、19歳になったら、障害年金の診断書を書いてくれる病院さがしが、必要です。

なお、福岡市の場合、療育手帳の申請には、医師の診断書は不要です。児童相談所(えがお館)か、福岡市障がい者更生相談所で専門職員(資格を持った事務職員)の判定を受けます。

療育手帳を申請される方は、多くは、学校の先生に言われ、小学校低学年までに申請されるので、療育手帳をもらったときに、小冊子(福岡市の場合、「福岡市の障がい福祉ガイド」)を渡され、障害年金のことを知るようです。親として、つらく、悲しい手帳なのが、療育手帳です。

 

〇精神障害者保健福祉手帳とは

たとえば、仕事上のストレスなどで、夜、眠れなくなったり、1時間から2時間で目が覚めるといったとき、精神疾患が疑われます。
不眠が1か月も、2か月も続くと、働く意欲もなくなり、仕事が、もはやできなくなり、休職したり、あるいは退職のケースもあるでしょう。このような病状の場合、心療内科や精神科に通院し、カウンセリングを受け、薬を処方されます。通院医療費を軽減するために、自立支援医療を受けられていると思います。

精神障害者保健福祉手帳は、お住まいの市区町村役場に申請します。1級から3級までありますが、1級が最も重く、3級が軽い状態です。

精神障害者保健福祉手帳をお持ちでない方は、役所とつながらないため、障害年金のことを知らないまま、10年以上、通院されているケースは、多いと思われます。

精神疾患だからといって、障害年金が必ず受給できるわけではなく、精神科医師による障害年金診断書にどのように書いてもらえるか、簡単に言うと症状をどう医師に伝えるのかが、受給につながる重要なポイントです。

通常、障害年金専門の社労士は、医師の診断書のどこの記載部分が障害年金受給の可否を決める重要ポイントかを理解しています。当事務所では、医師に診断書記載の依頼をするときに、本人の症状を記載した病歴・就労状況等申立書をお渡ししております。

医師も、いろいろな資料があったほうが適切な判断ができるので、おおむね好評のようです。

障害年金との関係で言えば、「うつ病」や「統合失調症」の方が、ご自分で年金事務所で申請されるのは、やめておいたほうが無難かと思います。